Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
途中、正季は敵の捨てた折れ弓を見つけて、
「たれか、あれを拾うて、兄上へ差上げい。おくるしそうだ。弓杖にして行かれるといい」
と、言った。
ここへ来ては金剛千早の日の古傷もあわせて痛んでいたかもしれない。正成はさっきからすでに跛行を曳いていたのである。で、弓杖を持つといくぶん姿勢を直してほっと先頭で一ト息していた。すると、かたわらの灌木帯のうちから、とつぜん、躍り出した男がある。鉢金だけの素兜に腹巻をしめた軽捷な敵だった。――すわっと周囲の者は正成を庇ッて一せいに立ち向いかけたが、それいぜんに、その者は地へ坐って両手をつかえ、
「しばらく! しばらくおとどまりを。それがしはこの春、河内へおたずね申しあげた者。あの折の右馬介と申す者。暫時、河内殿へ……拝顔のおゆるしを」
と、絶叫に近い声で周囲の血相へ訴えていた。
「おう……」正成は、すぐ前へ出て「それよ。そちは過ぐる頃、尊氏の使いとしてみえた、密使の男だの」
「されば、その一色右馬介でございまする。ふたたび、主君尊氏の意をおびて今日、これへまいりました」
「この期に何を」
「ついに、事、かくのごとくには成り果てましたが、主君尊氏には、なお、まいちど楠木殿のお胸をただしまいれと、あくまで、過ぐる日の密使のお旨を、おあきらめではございませぬ。