Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
するうちに、もくっと、堂のうちから一条の煙がひさしを越えた。煙はすぐいちめんにひろがり、八木ノ入道法達が泣き声に近い声でさけんだ。
「おすましなされた。おやかたさま以下、はや、ご自決をおとげなされたもようだぞ!」
同時に、この煙は、敵の大軍勢をもさしまねいていた。須臾のまに、部落内は混み入って来た兵馬で揺れあい、渦まく吠えの下からは、足利方でもゆゆしげな武将ばらが、はや先を争ッて、時宗堂の屋根を目ざしてくる。――いまは何かせん、である。八木法達、安間了現ら二十余名は、正成みずからがして遂げた荼毘の煙をあとに、北の谷ぶところへ逸散に駈けおりた。そして岩壁をよじ、山の背をつたい、布引ノ滝の方面へ落ちて行った。
いやこのばあい、それらはもう足利方でも重要視はしていなかった。要は楠木左衛門尉正成の死一つの確認にある。その正成は決してここを出ていず、一族数十名と共に自刃したものとはすでにみとめられていた。けれどその首級をあげて、尊氏へ、また世上へ、示すのでなければ、なおまだ公な認証とはなりえない。
打物取って打ち合っての大将首ではないけれど、さしも正成の首である。