Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
同じ感は、諸将にもあった。
今暁もである。
「大殿は」
と、彼らが、朝の伺候に、魚見堂の内へ集って来ると、尊氏はすでに、暗いうちから外の幕舎に出ているという。行ってみると、彼は、うすい白紗をかけた正成の首の台と対いあって、黙想していた。生前、尽しえなかったものを、死者と語り合ってでもいるかのように、ひとり床几にかけていた。
だが、一同の朝礼をうけて、朝の光の中へ立ち出ると、彼はいつもの尊氏だった。いや一ぱいな威と光彩を加えた戦捷の人、明日の大将軍その人ですらあった。
そして今朝第一の令は、
「真光寺の僧に命じて、正成の遺骸と、ほか五十体の一族とを、ねんごろに葬わせよ」
と、いうことと、また、
「とは申せ、軍紀はまげられん。正成の首は、湊川の河原に梟けろ。首札は特に、この尊氏が自身で書く」
とも、言っていた。
その日、湊川の川原に、首札が立った。正成の首も曝されたはずではある。
だが、その実物を目撃した者はほとんどすくなかった。なぜなら、まもなく、たくさんな僧侶がここに立って、読経をあげ、首はていねいに首桶に処理して、近くの真光寺の内へ捧げて行ってしまったからだ。