Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
神器の御譲渡、立太子の挙式、つづいて建武式目の公布などがあってからこっちは、ここの警戒や扱いも、自然ずっと、緩和されていたときでもある。
その晩、また。御所を訪ねてきた侍があった。
――自分はもと刑部省の一吏員で、大輔ノ景繁という者であるが、御所にかしずいている女房からの手紙によると、正月も近いというのに、余りにおわびしそうな先帝の御起居ぶりである。――で、酒などたずさえ、ご起居のお見舞に、所領地から出てきた次第。なにとぞ、そっと、御所内に入ることをゆるして欲しいと、番屋中一同の者へ、ぬかりなく賄賂をしての頼みであった。
刑部ノ景繁とは、何者かの変名だろうし、さきに御所内へ入りこんだ酒商人も、一味の徒であったに相違ない。――それを警固武士はしごくのんきに見すごしていた。天野酒の大瓶を番屋に持ちこんで、翌晩などは、みな酔いつぶれていたらしい。
このあいだに、御所内では、ひそひそ、
「首尾こそよし」
と、していたであろう。
ひるには、女官の新勾当ノ内侍が、母の危篤とかで、おはしたの女や小女房ら数名と共に、輿に乗って、外出していた。だがこれは、警固所へも届け出のあったことであり、武士たちも知っていたのである。