Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「極秘のこと、書状にしては万一が惧れられる。しかしそちならば年来の馴染みだ。先の道誉も疑うまい」
「お使いでございますな」
「そうだ。直義の軍勢は今朝立ったが、佐々木道誉らの先鋒は、すでに鎌倉を立っておる。――その佐々木の陣へ、秘命をつたえに行って欲しいのだが」
「おやすいこと、さっそくにも」
「いや、やさしくない。味方のたれ一人にも知られてはまずいのだ。行く行く味方の陣地を通らねばならんが、そちの顔は余りにも味方には知れすぎておる」
「お案じなされますな。それほどの御秘命なら、頭を剃りこぼち、寺の備えにある笠、法衣を着てまいります」
「俄か坊主か。それやよかろう。道誉に会うて、云々、尊氏の意中をかく申せ」――と、その云々の内容を小声で彼にささやいたが、また一考して、
「いやあの疑いぶかい道誉ではあるな。そちの使いでも、言葉だけではなお、これほどな大事、なかなか信じぬかもしれぬ」
と、机の上の禅書に、目をおとしていたが、やがて朱筆をとって、その禅書の文字の諸所に、朱点を打ったり、棒を引いたり、また欄外に書き入れするなど、苦吟、長いことかかって、
「これでよい」
と、やっと筆をおいた。