Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
さらに三島まで一路降り坂で、その彼方には駿河湾の冬の海が黒いといっていいほど深い碧をしている。
しかし、そこまでを見とどけたのは、先駆の物見隊だけで、尊氏の本隊は、なお地蔵堂のあたりにとどまり、吹きすさぶ風花まじりの山颪の下にその晩は夜営していた。
地名、竹の下とは“岳の下”の意味か。――物見の言によれば、そのへんから足柄明神へかけて、およそ七、八千とみられる敵が諸所に団々たる大焚火をあげて温もっているという。――いまは疑いの余地もない。大将尊氏の胸にあるものは、その搦め手の敵軍を、不意に、真上から撃ち下ろすにあったにちがいない。
「旗は」
と、尊氏は物見の者に、彼らが眼で知りえたかぎりの旗じるしなど聞きとっていた。
それによって、敵の主陣は、義貞の弟、脇屋義助、義治とわかった。
また中書ノ宮尊良親王以下、八人の公卿大将がそのうえにいることもわかった。
「よしよし、ほかの大名旗本勢など、いちいち知る要もない。まずは腰糧を食うてよく寝ておけ」
と、これは物見隊へだけでなく、全軍の将士へも同様な令でつたえられた。
けれど腰兵糧は氷を噛むようなものだし、火の気はもちろんゆるされず、その寒烈は骨を刺す。