Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
どう番兵の眼を掠めて来たのか。金若のしらせを手にし、彼女もあすを期して、ただならない今夜にはちがいない。――が、それにせよまずいところを見せたものと、帝も一目おいている廉子だけに、はたと、ご当惑な眉だった。
もとより廉子は皇后ではない。都には皇后の禧子がある。
が、その自意識において彼女は皇后とおなじ気位をほこっていた。三人の典侍中では年上であり、またなによりは帝の御子をいくたりも産んでいる。
それにこの遠流の辛酸までを、蚤虱と共に、帝と一つにしてきたことだ。
その契りは、比翼の鳥もおろかと思い、つねに生死と紙一ト重な敵中で、いわば糟糠の妻振りを、かたむけつくしていたのである。
それには、帝もあたまが上がらなかった。――都にある名ばかりの皇后とはちがった意味の皇后――いや皇后以上なものと彼女をゆるすしかなかった。同時に廉子は、帝にとって姉か母かのようだった。愛情とはべつな恐さが廉子のうしろにあるのらしい。朝夕の食膳のこまかい注意から、帝がもっとも嫌いな灸でさえ、月々の七日灸は、いやおうなしに施えてしまうなど、そんな芸は、廉子でなくばなしえない妙術だった。