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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「そなた。番卒の眼は、どうして掠めてきたのか」

「番の者へは、持仏やら釵を与えて、やっと得心させて来たのです。あの小宰相だけは、日頃からさも誇らしゅう、この廉子や権大ノ局の小屋の前をあるいて、みかどの許へ、よう通っていたようですが」

「もう、いうな」

帝は、彼女の刺すような眸からお顔を外した。これが気のいい権大ノ局か、または小宰相でもあるならば、なんのためらいもなしにその唇をふさぐすべもあるのにと思われたが、こんなときの廉子には帝もお手が出なかった。三十路の豊艶な花はまだ露も香も十分にたたえているが、それにもかかわらず棘がある。

けれど女性の棘は必ずしも拒否の表情とは限らない。

むしろその逆である。廉子も暁にいたるまで帝に侍してささめいていた。

断崖の男女はきまってこんなときその悲調な奏でをたかめあって、さいごの饗宴を愛熱の杯に酌みあうものであるようだ。わけて廉子の脳裡には、小宰相への憎しみが燃えていた。帝までが憎かった。啖い殺しても上げたいほど女心では憎くてならなかったのである。彼女は三十路をすこし越えた自分の容色と肉体に負けじたましいをふるいおこしていた。