Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「それは一曙光だ」
と、喜悦しあって、
「さっそく奏聞に」
と、忠顕だけが一人船艙の底へ、手さぐりで五、六段降りて行った。
暗い魚油の灯が一つ架かっている。
干鯣か魚屑のにおいだろうか。鼻をつく異臭であった。荒むしろの片すみには、妃の廉子と権大ノ局が寄り添って一つものみたいに居眠っており、小宰相はぽつねんと、ひとり離れて、その身おもな体を海藻のように横たえている様だった。
帝はと見れば。
乾魚俵に肱をついて、頬づえのまま、こんこんとしておいでになる。……そしてふと、忠顕がぬかずいた気配にその上半身を重そうに擡げられた。一夜のうちにゲッソリ頬もこけたような龍顔である。さすが心身ともに綿のようなお疲れらしい。
「みかど。もうご安泰にございまする。岩松の党も、海上のお迎えに来合せました」
「吉致が再度来たのか」
「はい」
忠顕は奏上した。
さきに、岩松家へ賜わった綸旨をたずさえて、吉致の兄、岩松経家が、あれからすぐ関東へ急下して行った由を、つたえて。
「成否はもとより天にありますなれど、勅を奉じた岩松経家が、ともあれ、その好都合な立場から新田、足利両家の仲に立って、あらゆる手を打つ所存であるとのことでございまする。