Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
わずかの間の怺えだ、女子供や老人はしばし山野へ身を避けていよ」
大声でこう言いながら、逃げまどう市民の中を探題御所の方へ駈けて行った馬上の将があった。つづく兵があった。
それを見たし、市民はまた、いままで見たことない一旒の錦旗も眼に見た。けれど「勅」といわれても「逆賊」と聞かされても、多くは何のことやらも分らなかった。降ッてわいた合戦と方々の火の手にただ、死ぬまい、生きようとするだけの相だった。
菊池一族の三百騎ほどは、息ノ浜から松原口まで、驟雨のように駈けて来たが、
「待て」
武時の命に、一ト息入れた。
「頼隆、おかしいぞ」
「どうしたのでしょう。約束の少弐(筑後守貞経)や大友(近江守貞宗)のうごきはどこにも見えません」
「よも違約はあるまいが、念のため、使いを待とう」
少弐も大友も、共に、船上山からの密詔と錦旗をうけていた者だし、それ以前からの同志でもある。
で、こんどの博多召集には、火の手をあいずに各自の宿営地から起って、九州政庁の探題邸を一挙に占拠してしまおうという密盟の下に、国を出て来たことなのだった。
ところが、まもなく。
大友貞宗の陣営へやった使いの二人のうち、一人だけが、蒼白になって逃げ帰って来た。