Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
思うに、旅人の彼も、旅籠かどこかで、暁の合戦に寝耳に水のおどろきを浴び、血のちまたやら黒けむりの下を逃げまどった群衆の中の一人であったのではあるまいか。
その恐ろしかった見聞を、彼は後日、なんという目的でもなく、ただ目に見た社会事件として、生々と記録していた。
それの用紙には、
――東福寺領肥前ノ国彼杵ノ荘ヘノ鎌倉幕府下知状目録
といったような文書の反故裏がたんねんにつかってある。そして前年十二月から翌年四月までの社会記事が主となっているのだが、右のうち三月十三日の博多合戦前後の部分を、史家が「博多日記」となして今日の一等史料とされている次第である。
だから博多合戦は、後醍醐の隠岐脱出や、また船上山の合戦などからみれば、比較にならないほど小さい一局地の騒ぎであったにかかわらず、その詳細までがよく後世に残されたわけなのだった。――それとまた、筆まめな良覚法師は、合戦以外の、いくつかの哀話や巷談をも書き忘れていなかった。
その戦後哀話の一つ。
ここに。
犬射ノ馬場では毎日たくさんな人だかりがしていたが、なにせい“むほん人、誰々の首”とあるさらし場なので、ひとしく哀れな、とおもっても、探題北条氏をおそれて、たれひとり一枝の花を手向けてやる者すらなかった。