Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「や、狂女だ」

「オオ狂美人」

「なんとあの妙齢を」

「やれ、気のどくな」

こんな辻騒ぎがまだ消え去らないうちだった。

ちょうど、よそから帰って来た探題北条英時は、さっそく役人を呼んで、事のしさいをたずねていた。

「女は二人連れと申すが、博多の者か、よそ者かの」

「ついぞ見かけたことのないもので、ひとりは四十がらみの媼、気の狂うた方は、まだ二十歳にもみたぬ嫋女でございますが」

「何で発狂したのか」

「わかりません。とつぜん犬射ノ馬場で艶な笑い声を聞いたとおもうと、もう狂蝶のような姿を、外へ走らせておりましたので」

「して、どこへ?」

「媼の供が三、四人遠くにいたのでございました。やッとのこと媼やそれらの者が取りしずめ、輿のうちへ押しこめるやいな、人々の眼から逃げるように走り去ったことでございまする」

「……。安富」

英時は、従者のうちの安富浄明という入道武者を見ていいつけた。

「いずこの何者か、女の宿所をたずねて、たしかめて来い」

「はっ」

と、彼が立ちかけると、

「やよ浄明、腰の大太刀などは外して行け。先はさだめし、悲嘆に暮れていように、探題武者が訪ねて、さらに怯えさせては悪い。