Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「あやうきには近寄らずだ。なにも夜道を行くことはない。だが泊るところはあるか」

「いい寝床を見つけておきましたよ。このさきの漁小屋でさ。子づれの女が住んでいましたが銭をやってほかへ追い払っておきましたから火の気もあるし糧もある。よろしいじゃございませんか」

そこは。

堤の蔭に倚ったほっ立て小屋で、芦をすかして大河の水が光ってみえる。

牛をつなぎ、身をいれるばかりな小屋のむしろに坐って、ふたりはゴロ寝ときめた。だが夜は長すぎる。山崎ばかりでなく、鳥羽、伏見、あっちこっちの空も赤い。大蔵はどこからか酒を買って来て、

「どうです、おひとつ」

と、時親にすすめた。彼もまた欠け茶碗へ手酌で飲むことしきりだった。そしてなにか言いたそうなふうでもある。時親はにがりきった。酒茶碗には手も出さない。

「先生」と、大蔵は唇をゆがめた。これは彼が酔に達した証拠である。「いちど腹を割ッたところを伺ッてみてえもんだと、かねがね思っていたことですがね」

「なんじゃ?」

「いったい、先生って者は、宮方なんですかそれとも幕府方なんですか」

「いずれでもない」

「どっちでもねえんですかい。ふうム? ……」