Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「この家のお人か」

と、上へ誰何した。

草心尼が「そうです」と答えると、仲間同士で何かささやきあっていた兵は、ふたたび、

「では、探題殿の懸人の……琵琶法師とかいう母子のお方か」

と、かさねてきいた。

「はい。先の月、小松谷からここへ移って来たものですが」

「それは」と、兵の中のかしら立った者がちょっと礼を見せて、

「お驚かせして、相すまんことでおざった」

「何かあったのですか。こん夜」

「たそがれこの近くで、一人の曲者を捕り逃がし、それを狩りたてていたわけなので」

「盗賊でも」

「いや以前、六波羅で放免がしらをしていた忍の者でおざる。それだけに素ばしッこい。今もこの古館のへんで見たとの知らせに、すぐ駈けつけて来たのでおざるが」

兵のかしらは、そう話してから、高床の床下を覗きこんだり、ほそ谷川のあなたこなたへ、松明を振らせてしきりに騒ぎぬいたすえ、やがて高欄の簾のうちを見上げて、

「どうもお騒がせ申した」

と、わび、

「もしまた、明日にでもあれ、怪しき男がこのへんを徘徊していたら、おそれいるが、お下部でも走らせて、ちょっと月ノ輪の屯までお知らせくださるまいか。念のため、申しおくならば、その曲者は三十六、七の眼のするどい雑人態の男でおざる」