Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
ご憂慮にはおよびませぬ」
と、すでに残虐な血まつりの血を舐めてきた彼は、ひどく昂ぶッた語調で兄を励ました。
高氏は、うすら笑いに、
「そうか」と、聞いただけだった。
弟にはこの兄が、決断に欠け、どこか臆していて、依然“ぶらり駒”の大将に見えてならないのかもしれぬ。
が、高氏からみると、やや心もとない。直義はじめ幕僚すべて、大望、むほん、それだけで、もうまったく、ほかは見えなくなっている。
火の玉の意気も大事だが、破竹の軍だけが何をなそう。高氏には、遠くの困難がみえていた。
そこですでに。
矢作を立つまえに、上杉憲房と細川和氏は、彼のそばからその姿を消していた。ふたりは高氏の何らかの意をおびて、京へと、先に急いでいたのであった。
それやこれや、彼の胸算用は人知れぬ忙しい疾風の中だったろう。またその行軍も、熱田から以西は、夜を日につぐの急だった。
軍日誌によると、一ノ宮、大垣、垂井の間をほとんど四日たらずで行軍しており、あげくに墨股では、むりな雨中渡渉までおこなっている。
だが、関ヶ原を見つつ、野上ノ宿までくると、
「ただ事でない」
と、先を駈けていた物見組がひっ返してきて、あわただしく中軍へ知らせた。