Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
道誉も彼を呼び捨てに。
そして、喉のへんで圧しつぶされたような声とひとつに、ぼってりと柔軟なその体を、膝ぐるみ、ぐいと前へのり出していた。
「お、道誉」
高氏も彼を正視する。
その眸を道誉はとらえた。ねばりッこくいつまで相手を離さなかった。なお奥底のものを見極めようとするのらしい。こういうとき、彼の如き人間の眼気には長く耐えられないのがふつうだが、高氏はふんわりしていた。つい先に瞳孔をちらつかせたのは道誉の方であった。
「訊くがの、足利」
「なんじゃ」
「勝算はあるのか、勝算は」
「なくてどうする」
「おとろえても、相手は天下の幕府だぞ」
「知れたものよ」
人を吸いこむような柔らかい顔でいながら、高氏は揶揄を弄していた。
「恐いのか、道誉」
「むほんをくわだてながら、恐ろしくないなら嘘だ、大きなばくちではあるまいか」
「いやこの身には、賽はもう投げられたのだ。投げられたあとは恐さなどもない。腹をきめたらそれが分ろう。まだ、きめられぬのか、お身ほどな人物でも」
「…………」
「畿内の戦場へ共に出よとは決して申さぬ。ただ高氏の質子をこれへ留めおくゆえ、お身はこのまま伊吹にあって、素知らぬ顔で見ていてくれ。