Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「うむ、上機嫌でおざる」
大きく、うなずき込んだ首を、高氏は襟もとふかく埋めていたが、やがて、虹のような息と共に、面を上げて、ニヤニヤと相手を見ていた。
「いかにも! まだ取りもせぬ天下の皮算用などは止めにしよう。それよりは、確とここにあるもので、おぬしという一個の男、おれという一個の馬鹿な男。そう二人だけの仲ではなしたいことがあるが」
「何を」
「おいよせよ。そんな立派な顔はするな。断っておいたではないか、もう密盟の話のほうは打切りだと。これからは凡愚と凡愚の交わりで行くのだ。その引出物に進上したいものがある。受け取ってくれまいか」
「貰おう、馬か、太刀か」
「そんなものではない。美しゅうて愛しいものだ。おぬしにもおれにもな。……が、思いきって連れてまいった」
「はあて、何であろ」
「藤夜叉だ」
「えっ?」
「こうなるのもぜひがない。元々は当家お抱えの田楽女だ。そして、おぬしがひそかに咲かせよう心でいた蕾だった。十一年前の花盗人が、それを返しに来たような巡り合せか。花はちと、褪せた色だが、まだ御未練は充分におありと見た」
「よいのか、それで。……それでそっちの胸は」