Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「これもよいな」
そのため、夜すがら眠りにつけないような帝でもない。
朝の千鳥に目をさまされた瞼も晴れておいでだった。久しく陽に会わない幽居なので龍顔の青白いのはぜひもない。髯も漆黒な若さをほこり、お唇は紅を塗ったようである。
粗末な後架を出て、濡れ縁の端の掛樋へ寄って行かれると十四、五歳の童僕が、下にいて、
「お顔を洗い召されるか」
と、そこの竹簀の子へ盥や手拭を供えて、うずくまった。
「ほ。金若だの」
「はい」
「そちだけは以前の所から、配所仕えとして、これへついて来たか」
「はい」
「典侍らは、昨夜、どこで眠ったの?」
「ぞんじませぬ」
「侍者どもは」
「知りません」
「何事も答えてはならんと、ここの代官、能登ノ介清秋から、かたくいわれておるか」
「はい」
帝は苦笑される。
朝の清掃から、お食事をはこんでくるのも、すべてこの小僕ひとりがするのであった。
また、それで事足るほどな狭さなのだ。ゆうべはよく分らなかったが、今朝あらためて、あたりの景やら室内のさまを御覧あるに、これはまったく急拵えな丸木づくりのほっ建て小屋といっていい。
間は、四間ほどあるが、荒壁に菅むしろを敷いたのみで、風雨にそなえ、蔀と遣戸があるだけのもの。