Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「されば、昨夜よりはこの能登が、おからだ一切を預かることに相なりました」
「そちの手へか」
「いかにも」
能登はやっと、相手の気位に平衡をとり得た気がして、眼をもって、ぐっと迫った。
けれどそれも長くは自分の視力にたえなかった。帝の眸はふしぎなものをたたえていた。これは一朝一夕にできた眸ではない。天皇の座にあって生れながら誰をも下に見つけている眼ざしなのである。だから能登の反抗にみちた眼気も、帝には蟇ほどな感もある容子ではない。
能登はかえって、底知れぬ淵へ吸いこまれそうな気さえしたので、あわててその深淵から元の俯目に返ってしまった。
「能登とやら」
「は」
「妃たちをなぜ離した?」
「いや、御用なればいつでも、郎党に付き添わせて、丘の下よりお呼びしましょう。それぞれべつな木の丸小屋にありますれば、ご心配は無用でおざる」
「それも鎌倉のさしずとか」
「天が下、われら武者が服すお主は、鎌倉殿よりほかに存じ申さぬ」
「忠義な犬よの」
けわしい沈黙をすこしおいて。
「能登!」
「は」
「さぞ、そちの腰の刀はよう斬れような。しかし何を斬れても、世には斬れぬものがあることも、わきまえておけよ」