Japanische Klassiker mit Furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Lesen Sie 篝火の女 (かがりびのおんな) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.727 Zeichen · 56 Bildschirme
『おなつかしい』
と口の裡でつぶやいた。もう、処女らしい涙をいっぱいにたたえて。
『お読みになったらすぐ火に燃やしてくれと使の大七殿が申しました』
『そうですか……』
焼くのも残り惜し気なのである。彼女はなんども読みかえして、吐息をついた。
『姫さま。お便りの中は、何んな事でございますか』
『――御覧』
萩乃にそれを渡して、彼女は、自分の小机のまえに坐りくずれてしまう。
この悶えを、この情熱を、遣り場なく喘いでいるようなそのうしろ姿――
萩乃は、彼女と背中あわせに、許されたその秘密の文を読んでいた。
八雲どの。
去ぬる年の都の誓いを、この身は忘れてはいない。神かけて、あの誓いは胸に刻みこんでいる。
然し、乱れ世の若人の儚さよ。戦と恋は両立しない。しかも、弓矢の捨てられない武人であることを、君もゆるせ。――ただここに、二人の希望をつなぐ一途がある。
それはおん身が、城地の監視をやぶって、私の城へ逃げてくることだ。幸にも我れ等は今、安中城に立てこもって、武田の遠征軍を蹴ちらしている。
貴女に、その勇気があるかどうか。幸にも、もし来給うならば、使の者に、その旨を齎らしたまえ。