Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かがりびのおんな

篝火の女

吉川 英治

Lesen Sie 篝火の女 (かがりびのおんな) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.727 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

われは、死を冒して、古河の利根川べりの辺りまで、手勢をひいてお迎えに参ぜん。

必ず吉報のお返しあらなんことを、信じて待つ。

永禄六年二月

三郎進

二度ほど繰返しているうちに、紙のうえに黄昏れが漂った。燭を点けて萩乃はその燈に手紙をかざした。ぼっと、音をたてて紙は一片の焔になってしまう。

『姫さま! ……』

後へ摺り寄って、八雲の耳もとへ、強い――低い声で、ささやいた。

『お書きあそばせ、御返事を――。その御返事を、大七殿が、今夜、御幸浜で待っているはずでございます』

『なんと書こうぞ、あの、真実なおことばに対して』

『真実なおことばには、真実を以てお答えするよりほかはありますまい。姫さまの真実とは、常に仰っしゃっているように、女の道を踏むという事でございます』

『では、この小田原を』

『お逃げあそばせ、萩乃が、一命をもって、お供いたしまする』

『でも、御先祖からの主君の地を』

『では――女の道はどう遊ばしますか』

『ああ……』

と、泣き伏したが、すぐ、

『萩乃。――硯へ水を』

と云った。

筆と紙とを持った八雲の面には、つよい意志が坐っていた。燭の明りがその横顔の情熱を明々と焼いている。