Japanische Klassiker mit Furigana
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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
Lesen Sie 脱線息子 (だっせんむすこ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.293 Zeichen · 221 Bildschirme
「黙っていると思って馬鹿にするな」
と見本を示した。
「この通りでございますのよ」
と貞子夫人はもう諦めて笑っていた。この日清次郎氏は殊に出来が悪かった。容態としては申分ないのに、独言を連発した。
客間でお茶を戴きながら、兄さんは、
「貞子さん、これあるかなですよ」
と言い出した。
「何でございますの?」
「清次郎の頭は毀れました」
「確かに異状がございますわ」
「貞子さん、あなたは三十年間清次郎を圧迫なさいました」
「まあ!」
「清次郎は思うことが言えなかったんです。恐らく三十年間の鬱憤が頭の中に溜っているんでしょう。あの繰りごとは皆死んで行く人間の声ですよ」
「兄さん、御冗談を仰有っちゃ厭でございますよ」
「死病の勢で初めて思うことが言える。俺はあれの今までが可哀そうでなりません。鳥の将に死なんとするその鳴くや哀し。人の死なんとするその言や善し」
「兄さん、あなたは何を仰有いますの?」
「貞子さん、大切にしてやって下さい」
「私だってそんな邪見な人間じゃございませんよ。長の年月ですから、多少の我儘はありましたろうが、随分仲良く暮して来ましたわ」
「それは分っています。しかし清次郎が弱過ぎたのです」