Japanische Klassiker mit Furigana
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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
Lesen Sie 脱線息子 (だっせんむすこ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.293 Zeichen · 221 Bildschirme
「秀子さん」
「あなたは何方様でいらっしゃいますか?」
「西川です」
と新太郎君も馬鹿々々しいけれど拠ろなかった。逆らえば何んな目に会うかも知れない。
「何処の西川さんでいらっしゃいますか?」
「銀座の西川です」
「何方に御用でいらっしゃいますか?」
「松浦さんにお目にかゝり度うございます」
「松浦は大主人でございますか? 若主人でございますか?」
「若主人に一寸お取次を」
「何ういう御用向でいらっしゃいますか?」
と秀子さんは何処までも真剣だ。
「さあ、御無沙汰伺いです」
「お名刺を戴きましょう」
「生憎と持ち合わせません」
「それでは西川何様と仰有いますか?」
「新太郎と申します」
と新太郎君が完全に名乗を上げた時、
「秀子さん、好い加減にしなさいよ。さあ、西川さん、何うぞ」
と友三郎さんが笑いながら出て来た。
客間へ通ったが、秀子さんはもうそれきり姿を見せない。
「悉皆御機嫌を損じてしまいました」
と新太郎君は頻りに髪の毛を扱き始めた。煩悶があると必ずこれをやる。
「何あに、心配はありません。その中に直りますよ」
と友三郎さんは落ちついている。
「飛んだ失礼を申上げました。今参ります」