Japanische Klassiker mit Furigana
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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
Lesen Sie 脱線息子 (だっせんむすこ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.293 Zeichen · 221 Bildschirme
「うん?」
と父親は頭を擡げた。
「いゝえ、お母さん、そんなことはありませんよ」
と寛一君は母親を睨んだ。父親の前へ都合が悪いといつもこれをやる。
「でも先刻愚痴を言っていたじゃありませんか?」
「あれは新太郎君がいつまでも帰って来ないから、伯父さんの御機嫌が悪いと言ったんですよ」
「新太郎さんは困ったものだね」
と父親は首を傾げた。
「困りますよ」
「もう病気は快いんだろう」
「初めから病気でも何でもないんです」
「商売が嫌いかな?」
「然うでもないようですが……」
「お父さんがやかまし過ぎるからな?」
「いゝえ、然うでもありません」
「若いものだから、何か彼方に出来たんじゃないかな?」
「いゝえ、いゝえ、そんなことは決してありません」
と寛一君は胸に汗の伝わるのを覚えた。
父親はもう追究しなかったから、これで事済みかと思っていると、食後、妹や弟が立ってしまってから、
「寛一や、お前は新太郎さんと仲善しだから、都合の好いこともあるだろうが、都合の悪いこともあるだろうな?」
と訊いた。
「えゝ」
「俺は或はこんな問題が起るかも知れないと思っていたよ」
「お父さん、何にも問題なんか起っちゃいないんですよ」