Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
これ元より江戸時代の事にして、今日わざわざかかる辺鄙の岡に杖を留めて夕陽を見るが如き愚をなすものはあるまい。しかし私は日頃頻に東京の風景をさぐり歩くに当って、この都会の美観と夕陽との関係甚だ浅からざる事を知った。
立派な二重橋の眺望も城壁の上なる松の木立を越えて、西の空一帯に夕日の燃立つ時最も偉大なる壮観を呈する。暗緑色の松と、晩霞の濃い紫と、この夕日の空の紅色とは独り東京のみならず日本の風土特有の色彩である。
夕焼の空は堀割に臨む白い土蔵の壁に反射し、あるいは夕風を孕んで進む荷船の帆を染めて、ここにもまた意外なる美観をつくる。けれども夕日と東京の美的関係を論ぜんには、四谷麹町青山白金の大通の如く、西向きになっている一本筋の長い街路について見るのが一番便宜である。神田川や八丁堀なぞいう川筋、また隅田川沿岸の如きは夕陽の美を俟たざるも、それぞれ他の趣味によって、それ相応の特徴を附する事が出来る。これに反して麹町から四谷を過ぎて新宿に及ぶ大通、芝白金から目黒行人坂に至る街路の如きは、以前からいやに駄々広いばかりで、何一ツ人の目を惹くに足るべきものもなく全く場末の汚い往来に過ぎない。