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Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

雪にも月にも何の風情を増しはせぬ。風が吹けば砂烟に行手は見えず、雨が降れば泥濘人の踵を没せんばかりとなる。かかる無味殺風景の山の手の大通をば幾分たりとも美しいとか何とか思わせるのは、全く夕陽の関係あるがためのみである。

これらの大通は四谷青山白金巣鴨なぞと処は変れど、街の様子は何となく似通っている。昔四谷通は新宿より甲州街道また青梅街道となり、青山は大山街道、巣鴨は板橋を経て中仙道につづく事江戸絵図を見るまでもなく人の知る所である。それがためか、電車開通して街路の面目一新したにかかわらず、今以て何処となく駅路の臭味が去りやらぬような心持がする。殊に広い一本道のはずれに淋しい冬の落日を望み、西北の寒風に吹付けられながら歩いて行くと、何ともなく遠い行先の急がれるような心持がして、電車自転車のベルの音をば駅路の鈴に見立てたくなるのも満更無理ではあるまい。

東京における夕陽の美は若葉の五、六月と、晩秋の十月十一月の間を以て第一とする。山の手は庭に垣根に到る処新樹の緑滴らんとするその木立の間より夕陽の空紅に染出されたる美しさは、下町の河添には見られぬ景色である。