Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
もし以上の如き珍々先生の所論に対して不同意な人があるならば、請う試みに、旧習に従った極めて平凡なる日本人の住家について、先ずその便所なるものが縁側と座敷の障子、庭などと相俟って、如何なる審美的価値を有しているかを観察せよ。母家から別れたその小さな低い鱗葺の屋根といい、竹格子の窓といい、入口の杉戸といい、殊に手を洗う縁先の水鉢、柄杓、その傍には極って葉蘭や石蕗などを下草にして、南天や紅梅の如き庭木が目隠しの柴垣を後にして立っている有様、春の朝には鶯がこの手水鉢の水を飲みに柄杓の柄にとまる。夏の夕には縁の下から大な蟇が湿った青苔の上にその腹を引摺りながら歩き出る。家の主人が石菖や金魚の水鉢を縁側に置いて楽しむのも大抵はこの手水鉢の近くである。宿の妻が虫籠や風鈴を吊すのもやはり便所の戸口近くである。草双紙の表紙や見返しの意匠なぞには、便所の戸と掛手拭と手水鉢とが、如何に多く使用されているか分らない。かくの如く都会における家庭の幽雅なる方面、町中の住いの詩的情趣を、専ら便所とその周囲の情景に仰いだのは実際日本ばかりであろう。西洋の家庭には何処に便所があるか決して分らぬようにしてある。