Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
思えばかえって不思議にも、今日という今日まで生残った江戸音曲の哀愁をば、先生はあたかも廓を抜け出で、唯一人闇の夜道を跣足のままにかけて行く女のようだと思っている。たよりの恋人に出逢った処で、末永く添い遂げられるというではない。互に手を取って南無阿弥陀仏と死ぬばかり。もし駕籠かきの悪者に出逢ったら、庚申塚の藪かげに思うさま弄ばれた揚句、生命あらばまた遠国へ売り飛ばされるにきまっている。追手に捕まって元の曲輪へ送り戻されれば、煙管の折檻に、またしても毎夜の憂きつとめ。死ぬといい消えるというが、この世の中にこの女の望み得べき幸福の絶頂なのである。と思えば先生の耳には本調子も二上りも三下りも皆この世は夢じゃ諦めしゃんせ諦めしゃんせと響くのである。されば隣りで唄う歌の文句の「夢とおもひて清心は。」といい「頼むは弥陀の御ン誓ひ、南無阿弥陀仏々々々々々々。」というあたりの節廻しや三味線の手に至っては、江戸音曲中の仏教的思想の音楽的表現が、その芸術的価値においてまさに楽劇『パルシフヮル』中の例えば「聖金曜日」のモチイブなぞにも比較し得べきもののように思われるのであった。