Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
もう時間か。……よし、いま行く。待っていてくれたまえ」
そして博士は立ち上って、窓を開ける。家鴨と目を見合わす。
「さあ。呼吸ぬきに出かけようか。……とにかく人間というやつはうるさい。なにしろ、やつらがつくり上げ、やつらが犇めきあっている世界の他に、世界なんてないと信じこんでいるんだからな。だが、私は君たちの仲間だ。君たちの世界こそ、私の世界なのだ。そこでこそ、私はくつろぐことができる。……さて、そろそろ君たちの世界へ行くとしようか」
博士は手足を屈伸させ、ゆっくりと伸びをするように左右に手をひろげる。そして、あの茫洋とした深く澄んだ目つきになる。と、博士の姿はぼやけはじめ、濃い煙のようになってみるみる縮んでゆき、その中にあの二つの目だけが光って、いつのまにか、博士は一羽の家鴨に変身してしまっている。
博士は、羽搏きをし、開かれた窓から闇の中に姿を消す。やがて、池の上で聞いたあの叫びが、鳴き交わすように裸木の林のあいだを縫い、池の方角へと遠ざかってゆくのが聞こえる。遠く、博士を歓迎する無数の家鴨たちの叫びごえが、かすかに、隠密なざわめきのようにはじまり、真暗な夜の奥に、いつしかその音の無いざわめきがみちあふれる――