Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
いつのまにか彼は、身長5センチの彼女の仲間入りをし、その目で妻を見、その耳で妻の声を聞くようになっていたのかもしれない。かつて愛した妻の肌は、いまは毛穴ばかりが目立つグロテスクな象の皮膚でしかなかった。湯上りのときなど惚れぼれしたその淡紅色に染った白い肌も、いま見ると皺だらけの、やたらと赤い斑点を散らしただんだらの臭くて粗悪なゴムの延板にすぎない。しかも皺にはかならず脂と汗がひかり、毛穴からは剣のようなおそるべき剛毛が突き出ている。
いちど接吻をしようとして、彼は吐気と恐怖とをかんじて身をそらせた。鯨が口をあけたような、赤い洞窟を思わせる巨大な暗がりのなかに、核分裂によって膨脹した奇怪なアミーバみたいな舌がひそみ、それが無数のいぼを密集させて動くのがなんとも醜怪でたまらず、おまけに自分がそのぬるぬるの赤い洞窟の中に吸いこまれ、嚥みこまれてしまうような気がしたのだ。
「……どうしたの? どうかしたの?」
うすく目をひらいて、妻が訊いた。彼は、思わず耳をおさえ、顔をしかめて叫んだ。
「うるさい! だまってしゃべれないのか?」
妻は黙り、目をうるませて横を向いた。