Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
怒った表情だった。その夜、彼は二人のベッドを部屋の中のできるだけ遠い場所へと離した。
「……ねえ、なにが気に入らないの? いってよ。……ねえ、なにかいったらどう?」
ベッドに坐ったまま妻はいった。彼はいいかえした。
「いったい君は、どうしてそんなに言葉をほしがるんだ? 人間は、みんな言葉にならないもので生きてる。言葉にはならないところに本当のぼくたちはいるんだ。言葉なんか不要で、それで心が通じあわなくって、それでどうして夫婦なんていえるんだい? もう、いいから黙っててくれ」
「だって、私……」
「たのむ、黙っててくれ!」
妻はぷいと立ち上ると、ベッドを下りて三面鏡に向かった。彼は蒲団をひっかぶった。
彼と妻とのあいだは、だんだん疎遠になり、反比例して彼の小さな彼女への思いはつのった。妻とのしらけた時間のあと、だから彼はかならず抽斗しの鍵をあけて、5センチの彼女と「目で」話すのに熱中した。
ああ、自分も5センチの小人になり、同類となって同じ机の抽斗しの中の、マッチ箱ほどのベッドに横になって彼女を抱くことができたら、彼女と結婚することができたら、どんなにすばらしいだろう!