Japanische Klassiker mit Furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
一月ちかく入院していた俵的はやっと退院したが、翌る年の秋になると、また同じ兆候があらわれて入院した。それが次第に健康を恢復してきたのは六つになってからである。俵的は、名前にふさわしい、どこか、とぼけたところのある、ひょうきんな子供になった。ある日、茶の間で、若い友人たちがあつまって話をしているとき、うしろの断崕の上に二本ならんでいる大きな木のことが問題になり、一本は欅であるが、もう一本は何だろう。榎のようでもあるし、楠の木のようでもあるが、といって話しあっていると、畳の上に寝そべって、紙の上に絵をかいていた俵的が、むくむくと起きあがったと思うと、
「あれはオザ木(尾崎)だよ」
といったので、みんな笑いだしてしまった。そのあとで、四国の県のことが話題にのぼり、徳島県に高知県、香川県、――それから何だったっけな、と、愛媛県を忘れた男が、ええ、といって考え込むような恰好をしていると、俵的が真剣な顔をして、
「それは小川ケン(軒)だよ」
と自信にみちた声で答えた。小川軒は新橋駅前にある私の古い馴染のレストランの名前である。同じ日に、手相の話が出て、手相があるくらいだから足にだって相のないことはあるまいと誰かがいうと、ほかの一人がすぐ足袋をぬいで自分の足の裏を眺めながら、この太い線は何かな、手相なら運命線というところ