Japanische Klassiker mit Furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
だがと、ひとりごとのように呟くのをきいた俵的が、
「伊東線だよ」
といったので、みんな返す言葉もなく、どっと笑いだしてしまった。俵的は落語というものを実際には一ぺんもきいたことがないにもかかわらず、ラジオの落語をきいてから落語がすっかり好きになって、いつのまにか言葉つきの真似をするようになっている。今年は小学校へ入学する筈であるが、数字はやっと十一までしか数えられず、ひら仮名で、自分の名前を書くことがやっとこさである。その成長ぶりを、にやにやしながら眺めている私の親馬鹿は今やまったく堂に入ったというべきであるかも知れぬ。私は真の愛情こそ、絶対の批判の上に成立つものだと思っている。この愛情の鞭が、大きく唸りを生じて俵的の頭の上に鳴りひびくのも遠いことではあるまい。私は親馬鹿の境地に安住し、親馬鹿であることに多少の誇さえもかんじている。親馬鹿の記録は日を逐うてつづいてゆくであろう。私は自分の感情の枠にはめて子供を育てようなぞとは思ってはいない。唯、金環蝕が終って陽のはじまるときに生をうけた子供が、五月の微風にそよぐ若葉の色彩の中に、すくすくと伸びてゆくことを祈るのみである。