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Japanische Klassiker mit Furigana

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おつきさまのうた

豊島与志雄童話集

豊島 与志雄

Lesen Sie 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.569 Zeichen · 336 Bildschirme

Aozora Bunko

そして涼しい風が軽やかに流れるたびに、息もつけないほどのよい香りが、むらむらと立ち昇ってくるのです。あまりのことに、爺さんはぼんやりしてしまいました。

やがて我に返ると、爺さんは早くその花を折り取ってやりたくなりました。ところが、崖の上からその谷間に下りるのが容易でありません。ごつごつした岩の崖で、何十丈というほど高いのです。爺さんはあちらこちら見廻してみて、ようやく一本の葛を見つけ出し、それにすがっており始めました。

ちょうど崖の中ほどまでおりますと、どうしたはずみか、葛がぶつりと切れて、あっと言うまに、爺さんはまっさかさまに転げ落ちました。転げ落ちるとたんに、高い鼻が岩角にぶつかって、ぽきりと大きな音を立てて折れてしまいました。

爺さんは谷底で夢中に飛び起きて、一番先に鼻へ手をあててみますと、さあ大変です、天狗からもらった大事な大事な鼻どころか、自分の元の低い鼻までも根っこからなくなって、顔がのっぺらぼうになってるではありませんか。あたりを見廻してみますと、今まで咲き乱れていた花は影も形もなくて、自分の足下に、何か赤いものが一つ転がっています。