Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さけぬさんざ

避けぬ三左

山本 周五郎

Lesen Sie 避けぬ三左 (さけぬさんざ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.846 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

四

「いや、さようなことはいちどもございません、ただ八郎兵衛はあっぱれもののふでございますから、彼の妹なれば、妻にして過ちなしと信じたのです」

「では、まるで相手を知らないのか」

「さればでございます」そう聞いて弥左衛門は眼を剥き、唸った。こちらはそんなことにお構いなく、懐中から白紙に包んだ物をとりだし、「出陣も近いうちと存じますので、できるだけ早く祝言をしたいとお伝えください、これは結納のかたちでございます」

「けれども、それは、とにかくその……」

「万事こなたさまにお任せ申しますから」

三左衛門は自分の云うことだけ云うと、あきれている弥左衛門をあとに、のっしのっしと帰って行った。

四

じっさいのところ、三左衛門は嫁にもらう相手を知らなかった。顔を見たこともなし、しぜん話をしたこともない、鷲尾八郎兵衛が榊原家中の高名な勇士であり、それに年頃の妹があるということだけで、この縁組を思いたったのだ。そのほかのことはなにも知らない、申し込んだら相手が承知するかどうかなどということも考えない、……つまりこの辺はまったく「避けぬ三左」の本領であった、これで出陣のまえに祝言ができる、そう信じて三左衛門は家へかえった。