Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
げたのあとは、ずいぶん目だって庭に傷つけたけれど、主人はふたたび小言はいわなかった。主人は、平生自分の神経過敏から、らちもないことに腹をたてることを、自分の損だと考えてる人である。いま細君にたいする小言のしりを結ばずにしまったことを、ふとおのれに勝ちえたように思いついて、すいれんのことも忘れ、庭を損じたことも忘れて、笑顔を細君にむけた。
細君は下女をよんで、自分のひよりげたを駒げたにとりかえさして、縁端へ腰をかけた。そうしてげたのあとを消してくれ、と下女に命じた。
細君は、主人からある場合になにほどどなられても、たいていのことでは腹をたてたり、反抗したりせぬ。それはあながち主人の小言になれたからというのでもなく、主人を恐れないからというのでもない。細君は主人の小言を根のある小言か根のない小言かを、よく直覚的に判断して、根のない小言と思ったときは、なんといわれたってけっして主人にさからうようなことはせぬ。
主人は細君をそれほど重んじてはいないが、ただ以上の点をおおいに敬している。
「おまえは、とくな性だ」
とほめてる。細君も笑って、
「とくな性ではありませんよ、はじめから損をあきらめてるから、とくのように見えるのでしょう」