Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
寂しさを寂しがるところに生の命があじわわれる。草の霜枯れるように死を待つイナゴは寂しいものである。けれども彼は死を待つさまたげをこばむことを知っていた。
自分はもう一つほかのイナゴをとって見た。それも前のと同じように自分の手からのがれようと、ずいぶん強く力を感ずるほど後足をけった。放してやって見ると、やっぱり土に飛びついたまま再び動けるようすもない。しばらく見ていても、さらに動かなかった。自分はもう一度そのイナゴを手にとって見た。格別弱ったようすもなく以前のようにまた後足をけった。自分は今度はそのイナゴを草へとりつかせてやった。すると彼はまさしく再び草にとりついて落ちないだけの生の働きがあった。
自分の欲するままにして死のうとするイナゴを、自分はつくづく尊いと思った。そうして自分は夢の覚めたように立ちあがった。背中の着物がぽかぽか暖かくなっていた。
立ちあがって七八町の先に、再びわが生まれ故郷を眺めなおした時には、もう以前のような心の痛みはなかった。かすかながら気分のどこかにゆるみとうるおいとを感じて、心の底からまだまったく消えうせてしまわなかった、生まれた村のなつかしさと親しさが、自分をすかし慰めるのであった。