Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
」
「うまいや。いい甘味だ。」
歯に沁みる冷い甘さを噛みしめながら、二人は笑をとりかわした。
「やっぱりあたし達が盗って喰べると思って、わざと渋柿だなんて云ってたんですわねえ。」
馬鹿馬鹿しい梵妻の浅智恵を忌々しく思うのを通り越して、わだかまりのないおかしさを感じた。
「うまいなあ。」
それには返事をしずに、新吉は自分で庖丁をとって別の一つをむき始めた。
四つの柿は、すっかり皮と種子になってしまった。二人の舌には果物のみが持つ清々しい味が残っていた。何の不満足もない瞬間だった。妊娠しているという事実が心を唆るためか、この頃妻の姿体が俄かに艶かしさを増して来たように思っていたが、今もその感じが鋭く襲って来た。新吉は火鉢の上で、妻の両手を軽く握った。火気のために掌は直ぐに汗ばんだが、霜の多そうな夜で背中や膝はつめたかった。
崖の下の町の方で、しきりに犬が吠えていたが、それが聞えなくなると、しんとした雨戸に月の迫るのを感じるばかりだった。どこで啼くのか、風邪を引いているような蟋蟀の声が聞えた。いつもこの室に並べて敷く二つの蒲団を、ひとつにしたいような夜であった。