Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
「ごめん下さい。」
耳馴れない男の声が庭先に聞えた。障子をあけると、隣家との境界の煉瓦塀の崩れた向うに男が立っていた。
「私は井原です。宅の塀が倒れたままになっているので、大変御困りだと承りましたが、申訳ありません。早速とりかたづけさせるつもりですが、東京中やられてしまったので、職人の手が足りず、ついそのままになっているのです。決してわざとうっちゃって置くわけではありませんです。」
痩せた、骨立った体を、わざとのように直立させ、嗄れた声で、切口上で云うのであった。蒼白い顔にまばらに髯の延びた陰影の多い表情の中に、人に親しまない皺があった。
「いや、私共の方は、どうせ庭らしい庭でもありませんから、このままでも構いませんが、とんだ御災難でしたなあ。しかしお互に命拾いをしたのは儲けものでした。」
相手が人に圧迫感を与える程緊張した様子を示しているので、彼はわざと砕けた調子で答えたが、先方は自分のいう事だけをいえばいいと云う風であった。
「今朝早くでした。お宅の家主だという方が見えまして、ひどく叱られました。あなたが大層御立腹だという事で。」
「へえ、家主がうかがいましたか、あの老人は向ういきの強い先生ですから、さぞかし一人でまくしたてたでしょうが、私自身はこのままでも決して差支ありません。