Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
どこから出て来たのか老犬は、おびえ切った様子で尻尾を振りながら倒れた家の廻をかけ廻っていた。
「乙子ちゃん、乙子ちゃん、乙子ちゃん。」
甲子は叫びつづけながら、今にも失神しそうな有様で、一郎の胸にしがみついた。
裏手の方から、じいや夫婦と女中がかけつけた。
「ちいさいお嬢様は。」
「駄目だ。養子さんと二人共やられちゃった。」
真当面にじいやに顔をのぞき込まれるのがいやなので、泣叫ぶ甲子を女中の手に渡すと、一郎はいきなり倒れた家の屋根に上って、瓦をめくり始めた。
倒れた家には隙間がなかった。一枚二枚手あたり次第に瓦をつかんではほうり出したが、何の甲斐もない事は直ぐわかった。その上地震はまだ止まないので、一郎は又芝生に立戻った。
「じいや、人足を多勢呼んで来てくれ。」
何を愚図愚図してるんだと、叱り飛ばす権幕だった。
「若旦那、駄目で御座ります。この界隈には無事なうちは一軒もありゃしません。みんなで鋤でも鍬でも持って来てやって見る外はありゃあしない。」
じいやは曲った腰を振って、裏の物置の方に行った。
一郎も澤も、家のつぶれたのは自分達ばかりでない事に始めて気がついた。