Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
多分、倒れた家から出て来る時に受けたのであろう。膝頭を擦りむいている外に、沢山の擦過傷が、血のあとを残していた。
「痛みはしませんか。」
黙って見ているのはかえってうしろめたくて、澤はわざと眉をしかめて聞いて見た。
「いいえ。ほんのかすり傷ですもの。」
「名誉の負傷ですか。」
呑気らしい事を云ったなと思ったが、養子はそれには答えないで、
「澤さんはひどいわ。私達を扶けようともしないで真先に逃げてしまうんですもの。」
と、ふだんの通りの快活な口のきき方で、斬込んで来た。何とかうまく引ぱずそうと思ったが、手痛い冗談だったので、澤は咄嗟に返事が出来なかった。自分がいちはやく逃げた事に対して、先刻から心の中で、恥じたり弁解したり、一人で苦しんでいたのだった。あの場合に、自分は縁側にいたので、直ぐに庭へ飛下りる気になったのだが、もしみんなと一緒に座敷にいたら、きっと養子を扶けたに違いない。逃げ道に一番近くいたのが自分の不運なのだと、彼はひどく悄気てしまった。
「私達なんか死のうと生きようと、御自分だけ助かればよかったんでしょう。」
何の悪気もないのであろうが、養子はつけつけと畳みかけた。