Japanische Klassiker mit Furigana
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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
Lesen Sie 雑居家族 (ざっきょかぞく) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.106 Zeichen · 283 Bildschirme
「ね、音枝さんて、失恋の経験ある?」
なんのこだわりもなさそうな問いだったので、音枝もつい気がるに、
「ないわよ。」
すると浜子は少し小ばかにしたような笑顔で、
「へえ、いまどき珍らしいわね。」
「そうよ。わたしは箱入娘ですからね。失恋どころか、得恋もないわ。さばさばしたもんですよ。」
「へえ、わたしはまた、音枝さんて、失恋ばっかりしてる人かと思った。」
「あら失礼ね。なぜ。」
「だってさ、三十までも結婚しないんじゃあ。」
「得恋がないのに、失恋があるはずないじゃありませんか。」
「ふーん。そんなの、わたしはいやだわ。」
「そうさ。わたしだって、すきでこの年までひとりでいるわけではありませんからね。」
そういったとたん、不意に音枝の目の先がくもり、針の手もとが見えなくなってしまった。
「あら、音枝さん、泣いてる。」
「泣かないわよ。」
いそいで涙をふいて笑う音枝に、浜子は容赦もなく、
「さては、失恋?」
「よしてよ。」
「いいじゃないの。でも、音枝さんて、案外純情なのね。はやらないわよそんなの。」
「…………」
「やっぱり、戦前派なのね。でもそんなの、美しいなんて思わないわ。男が悪いのよ。