Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

Lesen Sie 雑居家族 (ざっきょかぞく) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.106 Zeichen · 283 Bildschirme

Aozora Bunko

ね、そうでしょ。」

勝手なおくそくをする浜子の言葉を音枝はもう聞いてはいなかった。ただくやしいと思うのは、若い浜子などの前で、不覚にも涙などこぼした自分の馬鹿正直さであった。終戦という事実を一つのけじめとして、いっさいがっさいを忘れたつもりになり、父や母たちさえそれについては触れなくなっているひと昔前のことが、浜子の、一種の誘いにのって思い出されたことさえ音枝としては心外でならない。とはいえ、やはり音枝にとっては、今日となればなお更に大切な思いで心の奥にしまわれている、たった一つの青春のいろどりであった。

それは、音枝が、学徒動員からひき続いて、女学校卒業後も勤めていた工場で出会った青年であった。軽い小児まひで左足がびっこなところから兵役を免れていたのに、その不具であることが最後にはいのちを奪われることにもなったろうと音枝は思っている。激しい戦いの日々、生きようとする熱意で音枝をささえていたものは、その小児まひの足をもった青年だった。どっちを向いても丈夫な足をもった青年などいなかった。しかしいたとしても、やはり、たくさんの男の中でやはりその青年を選んだにちがいないと音枝は今でも信じている。