Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
Lesen Sie 霧の蕃社 (きりのばんしゃ) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.389 Zeichen · 57 Bildschirme
しかし、大柄な体を畳の上に窮屈そうに坐らせ、無器用な手で自分の着物をつくろったり、台所でいそいそと馴れない煮たきに心をくばっている哀れな妻の姿が眼に入ると、近藤にはまた別な感情が湧いてくる。頭のなかで四六時ちゅういじめつけている妻が可哀相でたまらなくなってくるのである。彼は思い返しでもするように、自分に言って聞かせる。
「この気の毒で、善良な妻をすてることはできない」
それに、いったん結婚した蕃婦を離婚する、ということは、理蕃上非常にわるい影響を残す。他の誰か、一般内地人にそういう不埒があった場合は、彼は自ら取締らなければならない地位に居るのである。
このまま結婚をつづけてゆく気もちもない代りに、妻を捨てる勇気もない。どうすればいいかわからなくなってくるのである。
「自動車に轢かれるか、急病にかかって妻が死んでくれれば……」
とんでもない想像が湧く時もある。しかし、そういう時小心な彼は心の秘密を誰かに覗き見でもされはしないか、という風にすぐに慌てて思い直すのが常である。
「いや、いや、妻を死なすわけにはゆかない。あいつにはなんの罪もないのだ」
悔恨に溢れることばかりの自分たちの結婚が、近藤には今更のように思い返されてき、眼頭はひとりでに濡れてくる。