Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
そのときは、それが本当の気持であったのかも知れぬ。その時以来、私は矢田津世子に会わないのだ。彼女は死んだ。そして私はおくやみにも、墓参にも行きはしない。
その後、私は、まるで彼女の肉体に復讐する鬼のようであった。私は彼女の肉体をはずかしめるために小説を書いているのかと疑らねばならないことが幾度かあった。私は筆を投げて、顔を掩うたこともある。
私は戦争中、ある人妻と遊んでいた。その良人は戦死していた。この女の肉体は、最も微妙な肉体で、そういう肉体の所有者らしく、貞操観は何もなく、遊ぶ以外に目的はないようだった。
この女は常にはただニヤニヤしているばかりの凡そだらしない、はりあいのない女であったが、遊びの時の奔騰する情熱はまるで神秘な気合のこめられた妖精であった。別の人間としか思われない。
然し、淫楽は、この特別な肉体によってすらも、人の心はみたされはせぬ。私が矢田津世子の肉体を知らないことに満ち足りる思いを感じるようになったのは、そのときからで、それは又、あたかも彼女の死のあとだから、無の清潔が私を安らかにもしてくれた。
魅力のこもった肉体は、わびしいものだ。