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Japanische Klassiker mit Furigana

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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme

Aozora Bunko

いずこへ

私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた。もっともそれは注意を集中しているという意味ではないので、あべこべに、考える気力というものがなくなったので、耳を澄ましていたのであった。

私は工場街のアパートに一人で住んでおり、そして、常に一人であったが、女が毎日通ってきた。そして私の身辺には、釜、鍋、茶碗、箸、皿、それに味噌の壺だのタワシだのと汚らしいものまで住みはじめた。

「僕は釜だの鍋だの皿だの茶碗だの、そういうものと一緒にいるのが嫌いなんだ」

と、私は品物がふえるたびに抗議したが、女はとりあわなかった。

「お茶碗もお箸も持たずに生きてる人ないわ」

「僕は生きてきたじゃないか。食堂という台所があるんだよ。茶碗も釜も捨ててきてくれ」

女はくすりと笑うばかりであった。

「おいしい御飯ができますから、待ってらっしゃい。食堂のたべものなんて、飽きるでしょう」

女はそう思いこんでいるのであった。私のような考えに三文の真実性も信じていなかった。

まったく私の所持品に、食生活に役立つ器具といえば、洗面の時のコップが一つあるだけだった。私は飲んだくれだが、杯も徳利も持たず、ビールの栓ぬきも持っていない。