Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
(三)
私は見知らない小料理屋でやけに酒を呷ったものだ。酔うほどに初冬の山中の温泉へ暗い人心を探して行くという重さがたまらなくなってきた。明るい南方へ行こう! 私は急に立ち上った。
飲んだくれた私は霊岸島を十時にでた大島通いの橘丸にふらふらと紛れこんだ自分を見出していたのである。静かな航海であったのに、私一人が吐きくだして苦しんでいた。朝の四時大島着。冬の海風が冷めたかろうと出てみると触る風の和やかさ! 南へ来てよかったな、旅で充実を感じた稀な経験だった。
(三)
私のは精神上の放浪から由来する地理上の彷徨だから場所はどこでもいいのだ。東京の中でもいい。時々一思いに飛び去りたくなる。突然見知らない土地にいたくなる。土地が欲しいのではなく、見つめつづけてきた自分が急に見たくないのだ。だから私の放浪は土地ではなく酒でもいいのだ。それが可能な国にいたら阿片吸飲者になっていたかも知れないと思う。私の生活は寧ろ甚だストイックだが、この魂の放浪に対しては凡そだらしなく自制心がないようである。だから旅では非常に軽卒な恋愛をする。
一夜の遊女に戯れるなぞというのではなく、軽率な感傷に豪毅な精神を忘れたあげく、いっそあの女とこの土地に土着してしまったら痴呆のように安楽であろうと考えるのだ。