Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
私は書きかけの小説を全部燃した。このためにあとで非常に困ったけれども、私はすくなくとも十年ぐらいは小説などの書けない境遇になるだろうと漠然と信じていたので、燃した方があとくされなく、あっちこっち身軽に逃げて廻れると思ったのである。真夏ではあったが、二度、原稿紙の反古だけで風呂がわいた。
私は空襲のさなかで三日にあげず神田などで本を買ってきた。友人達は呆れて、どうせ焼けるじゃないか、と言ったが、私は浪費せずにいられぬ男なので、酒がのめなくなり、女遊びもできなくなり、本でも読む以外に仕方がないから本を読んでいたので、私は然しどんな空襲のときでもその本を持ちだしたことはない。何一つ持ちだしたことがない。人から預った人の物だけ出していた。
実際よく本を読んだ。みんな歴史の本だった。ところが、その歴史が全く現実とひどく近くなっていた。見たまえ、第一、夜の光がないではないか。交通機関の主要なものが脚になった。けれども、そういうことよりも、人間の生活が歴史の奥から生れだそうとする素朴な原形に還っていた。酒だのタバコで行列する。割込む奴がある。隣組から代表をだして権利を主張する奴がある。