Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
生きられる性質のものであったかどうか疑問だと思っている。そして現実をむしろ夢想をもって眺めて、どんな卑劣なことをしても生きぬいてみせると悪魔の如く吠えることを好んだ荒君は、私にはハリアイのない女の笑い顔よりも却って現実の凄味や厳しさが感じられなかった。女のハリアイのない笑顔の中には、悪魔の楽天性と退屈とがひそんでいたように思う。
私は六月の中頃だろうか、もう東京が焦土になってのち、勇気をふるって「黄河」の脚本を書いた。脚本などとは名ばかりの荒筋のようなもので、半年以上数十冊の読書の果にたった二十枚の走り書であった。もちろん一夜づけであった。ただ厄をのがれるというだけの、然し、この厄をのがれるためにその半年如何に重苦しく過したか、私は新聞で日映の広告のマークを見ただけでゾッとした。
人間は目的のない仕事、陽の目を仰ぐ筈がないと分りきった仕事をすることが如何に不可能なものであるか、厭というほど思い知った。
まったく不可能なのである。私は遂に脚本を書いたが、これは正当な仕事ではないので、ただ重苦しさの厄をのがれるためというだけの全然良心のこもらぬ仕事であった。