Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
だから、月末になると姿を消す。一週間ぐらいは雲隠れで、之には僕も参ったけれども、他人の借金の言訳というものは極めて気楽でさしたる苦労でもなかったから、僕もとりわけこだわらず、雲隠れを咎めだてたことは一度もなかった。又、この男は五十ぐらいの年にもなり鼻下にヒゲなどというものまで貯えているくせに、ちょっとのことで赤面してマッカになってしまうという奇妙な好人物であった。
けれども、身動きならぬ病中に行方をくらまされた時には全く参った。とはいえ借金の言訳が苦痛だというわけでもない。なぜと云うに、こういう劇烈な病苦になると、世に孤独ほど呪うべきものがなくなってしまう。道を通る一人の人の跫音ですらなつかしい。さらに最もやりきれぬのが夜であり、あの暗闇であり、あの静寂だ。夜の電燈は僕のイノチで、この光が消えたなら僕のイノチも消えてしまう。僕の窓の正面に火薬庫があり、崖の上を銃剣さげてグルグル廻る番兵の姿が見えるが、病中僕の幻覚はこの火薬庫へ忍びより忽ち銃剣に追いつめられてとたんに火薬庫が爆発する、はじかれて我に返れば全身の苦痛で、腹這いになり、エビの如くに身をちぢめ、呼吸のかぎり唸りをひく。